ブラックバイトと認定された塾講師
先日、塾講師のアルバイトに関する記事がダイヤモンド社から公開されました。
ブラックバイト認定で業界危機、塾講師不足の深刻<<ダイヤモンド社>>
記事によるとブラックバイトと認定された塾講師の実態と、認定されたことによる塾講師への応募の現象と相反するように増える塾の現状を述べていました。
この記事だけ読むと塾講師のアルバイトはブラックバイトだから絶対にしない方が良いというような内容に思えます。確かに塾講師のアルバイトは酷な部分もあります。
しかし全ての部分がそうという訳ではありません。また塾講師をしたいと思っている大学生や社会人の方もいます。
本記事では私の実際の塾講師のアルバイトの経験を元に、塾講師のアルバイトの実態を考えていきます。
またこれから塾講師のアルバイトをしようと考えている人には必見の記事です。ぜひ参考にしてください。
そもそもブラックバイトとは
そもそもブラックバイトとは何でしょうか。
元々この言葉は中京大学の大内裕和教授がブラック企業になぞらえて、このブラックバイトという言葉を提唱したそうです。
Wikipediaによるとブラックバイトは下記の定義がされています。
”学生・生徒の労働法規に無知なのを捉えて残業代そのものの不払いや割増賃金不払い、休憩時間を与えない、不合理な罰金の請求など労働基準法違反して、学生や生徒に違法な長時間労働をさせたり、契約内容と違った業務をさせたり、厳しいノルマを課したり、高校や大学の試験期間であっても、休ませてくれないなど、扱いが酷いようなアルバイトのことである。”
長々とありますが要は労働基準違反をして酷い扱いをするアルバイトがブラックバイトということになります。
ブラックバイトの定義を塾講師にあてはめてみる
これを塾講師のバイトで考えてみます。
残業代そのものの不払い・・・いわゆる授業のための予習時間のことです。中学生や高校生の補習のレベルなら予習は必要ありませんが、大学受験などレベルが高くなると塾講師も予習をせざるを得ません。
また夏期講習や冬期講習の前には講習の勉強スケジュール(カリキュラム)を作成することになります。これがかなり厄介な作業で時間もかかります。時給としては発生しませんが、大抵の塾はカリキュラム1枚作成につき何百円の給与が出ます。
割増賃金不払い・・・これは1日の就業時間がある一定値を超えると発生します。塾の場合だと1日に何コマ以上すると時給が上がるという具合です。
これは大手の塾だとほとんどは適用されますが、中小の塾の場合は考慮されない場合があるようです。
休憩時間を与えない・・・休憩時間は人によって変わるので一概には言えませんが、一般的に塾は授業と授業の間に10分ほどの間隔が空きます。塾側はこの時間を休憩時間と捉えています。
しかし実際にはこの時間は休憩出来ません。生徒の出迎え、次の授業の準備、生徒とのコミュニケーション、生徒からの質問に応えるなどすべきことがたくさんあり、休憩などしている場合ではありません。
よって一般的には休憩時間がないと捉えられます。
不合理な罰金の請求・・・これは私の知る限り、塾講師はないと思われます。聞いたこともありません。
塾講師は本当にブラックバイトなのか
ブラックバイトの定義に塾講師を当てはめて見ていきましたが、さらに細かく見ていきます。
時間外労働が多い
世間一般で言うところのサービス残業というものです。塾講師もサービス残業はかなり多いです。
まずは就業時間だと思われる時間より30分は早く来ることを要求されます。例えば授業が17時からだとすると、出迎えが16時50分からになります。そして塾講師は授業やその他の準備をするために16時半には出勤することになります。よって時給は17時からしか発生しないのに、16時半には出勤することになり、30分はタダ働きになります。
また授業後のサービス残業も多いのが実情です。
授業後はその授業の内容を報告する授業報告書(授業カルテ)を作成します。フォーマットがあるのでそこに入力、または紙の場合は手書きしていきます。授業日時や担当者、授業の内容、授業の進み具合、その日の生徒の様子、宿題の範囲など事細かに記録に残します。
この作業が結構時間がかかります。授業中に授業をしながらカルテも書けるといいのですが、生徒によってはカルテを書かせてくれないほどよく喋る生徒もいて、毎時間カルテを書ける訳ではありません。
もし1コマ2人の授業を5コマしたとすると、カルテは10枚必要になります。もし授業中に1枚のカルテも書けなかったとすると、全ての授業が終わった後に10人分の授業内容を振り返り記録をつけることになります。
これはかなりの重労働です。これが授業後に訪れるサービス残業の実態です。
時給換算すると最低賃金を下回る可能性も
塾講師のバイトは外見は時給が高いです。1コマ90分2,000円の給料だとすると、時給は約1,350円です。東京都のアルバイトはおそらく平均は1,000円くらいなので、塾講師のアルバイトは時給の良いバイトということになります。
しかし上記でも説明しましたが、塾講師は必ず時間外労働があります。そのため場合によっては時給がかなり低くなり、最悪の場合最低賃金を下回る可能性も出てきます。
例えば20時から1コマだけ授業をしたとします。30分前に出勤するので、出勤時間は19時半です。それから授業の準備をし、生徒を出迎え、21時半に授業が終わります。それから30分カルテを書くとしたら、退社は22時になります。
その場合拘束時間は19時半から22時となり、2時間半の出勤となります。しかし授業は1コマしか行っていないので、2時間半で給料は2,000円です。これを時給に換算すると時給800円です。
時給が良いと言われている塾講師でも、場合によっては最低賃金を下回る時給800円になってしまいます。仮に授業中にカルテを書いて授業が終わったらすぐに退社すると考えても、時給は1,000円となり平均的な時給になります。
これが塾講師の時給の実態です。決して時給が良いとは言えません。
精神的なダメージが多い
塾講師は精神的なダメージもかなり多いです。
私は主に二つの出来事のダメージが大きいと考えます。その二つとは①担当講師を外される、②成績が落ちる、受験に失敗するです。
担当講師を外されるというのはかなり屈辱的なことです。もちろん人と人なので相性の善し悪しはあるものの、担当を外されるというのはかなりショックです。そして担当から外れた生徒とも塾で顔を合わせる機会があるので、その時はかなり気まずいです。
そして二つ目の成績が落ちることと受験に失敗することもかなりの精神的なダメージをくらいます。私は家庭教師になった今でもそうですが、生徒の成績を下げたことはありませんし、どの生徒も第1志望の学校に合格しています。
しかし勉強に絶対はありません。塾に通っても合格出来ないときは合格出来ません。そうなると生徒の保護者からのクレームに繋がります。保護者の方は塾にお金を払って子どもの将来を塾に任せています。
それなのにお金を払っているのに成績が上がらなかったり受験に失敗するということは、投資で失敗するのと同じです。塾に払ったお金が無駄になり、また子どもの未来も台無しになります。
それで黙っている親はいません。保護者から塾へのクレームに繋がり、担当講師と教室長は保護者から罵倒されることになります。これは中々苦痛です。メンタルが弱い人はこれが一回でもあると塾講師を辞めてしまいます。
それくらい塾講師は子どもの将来にも関わる責任重大な仕事なのです。
塾講師のバイトは決してホワイトではない
ここまで読んでいただいた方はもうお分かりになると思いますが、塾講師のアルバイトは決してホワイトバイトとは言えません。
時間外労働が多く、子どもの将来に関わる責任重大な仕事なのです。時給が良いからという安易な考えで塾講師のアルバイトをすると、確実にすぐに辞めます。
本当に教育が好きで子どもの成長に携わりたいという気持ちが無ければこの仕事はできません。
私が塾講師でアルバイトをした理由
私は大学に入学してからすぐ塾講師のアルバイトを始めました。なぜ塾講師を始めたかというとその理由は単純です。高校生の時から大学に入ったら塾講師のバイトをすると決めていたからです。
元々教えることはそこまで好きではなかったのですが、高校時代に通っていた個別塾の先生たちがカッコ良かったからです。
生徒の質問にはすぐに答え、悩んでいる生徒がいたらその生徒のサポートをする先生たちがカッコ良かったから自分も塾講師のバイトをしたいと思っていました。
塾講師のアルバイトのいいところ
ここまで塾講師の実態や良くない点を様々挙げてきました。塾講師をしたことがある人も無い人も、その実態については把握出来たと思います。
しかし塾講師も嫌な面ばかりではありません。デメリットもあればメリットもあります。下記で私が思う塾講師のメリットを紹介します。
他大学の同年代の仲間が出来る
大学生になると友人をたくさん作りたくなるものです。そして自分の通っている大学だけではなく他の大学の友人も欲しくなるのです。その時に塾講師はとても効果的です。
他のバイトと比べ、塾講師のアルバイトの約9割は大学生や大学院生です。中には社会人の方やフリーターの方もいますが、ほとんどが同じ年代の大学生です。そのため気が合いやすく話も合います。
そのため塾講師になると他大学の友人が簡単に出来ます。
塾講師は仕事柄上、比較的落ち着いた雰囲気の講師が多いです。もちろん中にははっちゃけた元気な人もいますが、落ち着いた知的な雰囲気の大学生が多いです。
みんなでワイワイ騒ぐのが苦手な人だけどいろんな友達を作りたい人にはオススメです。とても居心地の良い環境になります。
生徒の成長を間近で見れる
自分の成長は自分では中々感じることは出来ませんが、他人の成長はすぐに感じることが出来ます。
塾講師になると生徒のテストの結果や受験で生徒の成長を間近で感じることが出来ます。そしてテストの点が上がったり志望校に合格した時には、涙が出るくらい嬉しくなります。
これは塾講師の仕事のやりがいの一つです。生徒の成長を間近で感じることが出来るのは、とても嬉しく、また生徒を成長させて挙げるために自分も頑張ろうという刺激にもなります。
刺激になることが多い
生徒からは思いもよらない質問がよく来ます。勉強に関係することだったらその場でも分かると思いますが、勉強に関係のない雑学のような質問が来る時があります。
そこで答えられないと塾講師としてはカッコ悪いです。したがって生徒からの質問は次回までに調べてくる事になります。それは塾講師自信の勉強にもつながり、生徒からいい刺激をもらうことになります。
ダメな講師は生徒からの質問を聞き流してしまいますが、良い講師は生徒からの質問をしっかりと覚えて、分からない場合は次回までに調べてきます。
生徒だけではなく自分自身の成長にも繋がるのが塾講師の仕事です。
塾長やリーダーを務めた場合、とても良い経験になる
一つの塾である程度の期間が経過し結果を残すと、塾のアルバイトのリーダーになります。リーダーになるということは教室長とともにその塾のトップになり、塾を動かしていく存在になります。
どうすればもっと良い塾になるのか、どうすれば生徒の成績が上がるのか、どうすれば生徒の数が増えるのか。ビジネス的な視点で物事を考えることになるので、一般的な地位のアルバイトには経験出来ないとても良い経験になります。
そしてその経験は就職活動にも生きてきます。大学生の中でビジネス視点を持っている学生はそこまで多くありません。そこで塾講師のリーダーとして塾の運営に携わっていたことはアピールポイントの一つになります。
まとめ
上記で私の塾講師の経験を元に塾講師の実態を見ていきましたがいかがでしたでしょうか。
塾講師になりたかったけど嫌になったという方もいらっしゃると思います。確かに塾講師の労働環境は決して良いものではありません。時間外労働の多さや精神的苦痛もあり、本当に子どもと教育が好きでなければ出来ない仕事です。
しかしその分、仕事のやりがいもたくさんあります。一番のやりがいはやはり生徒の目標が達成できた時です。
定期テストの点数が上がった、志望校に合格した、英検に受かったなど生徒の目標は様々ですが、どの目標を達成した時も塾講師としてのやりがいは感じます。生徒と同じく本当に嬉しい気持ちになります。
少子高齢化が進むとはいえ、やはり個別塾の需要はこれからも増え続けます。もし塾講師のアルバイトを少しでも考えているのであれば、この記事を読んで自分に適性のあるバイトか考えてみてください。
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